強引上司の溺愛トラップ
「千ー鈴ー。起きろオイ、マジで」

あれからすぐに、千鈴さんはパタンと、テーブルに身体を預けて気持ちよさそうに眠ってしまった。課長が身体を揺すって声を掛けるけど、一向に起きる気配はない。


「いや、ほんとにすみません。このマンションに来た時点でちょっと嫌な予感はしたんですけど、まさか本当に課長さんのお家とは……」

神くんが千鈴さんのとなりで正座をしながら課長に謝る。どうやら、今日の夜に千鈴さんと会う約束をしていて、告白され、付き合うことになり……酔っ払ってしまった千鈴さんが、急に幼馴染みに会いに行くと言って、このマンションに神くんを連れてきたらしい。


「まぁいいですけど。でもコイツ、全然起きそうにないですよ」

「どうしましょう。俺、まだ千鈴ちゃんの家知らないんですけど……」

「……仕方ない。俺が送り届けてきます」

そう言って課長は立ち上がり、携帯でタクシーに電話を掛け始めた。そのまま廊下に出ていく。



「……佐菜ぁ、マジでごめんな?」

神くんが心底申し訳なさそうに今度は私にそう謝る。確かにもの凄い気まずい思いをしたけど、まぁ神くんのせいではない。


「いいよ、別に。それより、神くんも彼女が出来て良かったね。まさか千鈴さんとは思わなかったけど」

「千鈴ちゃんとも知り合いだったの? まぁ何ていうか、俺はもっと大人しい子が理想のタイプだったんだけどさ、凄い分かりやすくアプローチしてくれて、嬉しいな、可愛いな、って思ったんだよな」
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