強引上司の溺愛トラップ
神くんは、優しくて愛しそうな目で千鈴さんを見つめる。
神くんのこんな表情、初めて見た。

そうか。神くんも、理想の恋と現実は違ったんだね。それでも、今こんなに幸せそうだ。




その後、到着したタクシーに、課長と千鈴さん、そして神くんも乗り込んでいった。

私はひとりでボンヤリと課長の帰りを待っていた。


本でも借りようかな、と思ったけど、どうやら読書の趣味も課長とは合わないようで、私が普段読まない系統の本しか見当たらなかった。
テレビでも見ようかな、とも思ったけど、何だか急に眠気が襲ってきて、起きて待ってなきゃ……と思っていたのに、私は気付いたら……ソファの上で眠っていた。




「ん……」

目を覚ますと、部屋は電気が消えていた。
寝ちゃってたんだ!と焦るけど、となりで課長が気持ち良さそうに眠っていて、何だかちょっと安心した。
私はリビングのソファで寝ちゃったはずだけど、今はベッドの上にいた。課長が運んでくれたんだろう。
ひとり用のベッドの上にふたりで寝るのはちょっと狭かったけど、この距離が、凄く嬉しいと感じてしまった。

今何時だろう?と、ハーフパンツのポケットに入れておいた携帯で時間を確認すると、深夜三時だった。
課長も眠っているし、私もまだ眠い。もう一度、眠りにつこう。


ベッドが狭いから、なんて自分に言い訳しながら……私は課長にくっつき直して、また目を閉じた。

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