強引上司の溺愛トラップ
何でお前がここにいるんだよ、と課長が聞くけれど。


「いやー、ブーケトスのことで、彼女が急に色々こだわり始めちゃって。スタッフさんと打ち合わせしてるんですよ。夫を放置して。まあもう戻りますけどね。渡辺さん連れて!」

「え?」

私が間抜けな声を出したのとほぼ同時に、一島くんは後ろから私の腕を掴んだ。

私は、一島くんによって立ち上がらせ、そのままグイグイと引っ張られて、ブーケトスを待機する女性たちの中へと連れていかれた。


一島くんは、そのまま花嫁さんのとなりへと戻っていった。



わああどうしよう。
と、とりあえずここまで来たら席に戻るのもなんか変だし。

私は、女性たちのジャマにならなそうななるべく端っこに、ちょこんと立たせてもらった。




「じゃあ、いきまーす!」

元気な掛け声と共に、花嫁さんがフワッとブーケを投げる。


取るつもりはなかった。

でも、大きく弧を描いて飛んでくるブーケを……

他の女性たちが想像以上に本気で取りに行きにかかり……

一人の女性がバランスを崩したのがきっかけで、女性たちはもみくちゃになってしまい……


その場でその様子をぼんやりと見ていた私の手元に、ブーケはふわりと落ちてきた。
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