強引上司の溺愛トラップ
「え、え?」

突然のことに、私は驚くことしか出来ない。


課長は、私のとなりに座り直すと、その花束を「ん」と私に渡してきた。



「え、ええと、あ、ありがとうございます?」

「ん……」

「……」

「……」

「あ、あの、これは一体?」

綺麗な花束。もちろん嬉しいのだけど、突然のことで、訳が分からない。今まで、こんな風に花束を突然プレゼントされたことなんてなかったし。


課長の顔が何だか赤い。照れている?そして、緊張しているようだ。



「課長……?」

「っ、こんなに緊張するのかよ。一島は凄ぇな……」

「え?」

私はますます首を傾げる。


課長は、一回目を瞑り、数秒して、私をまっすぐに見つめた。


「……付き合ってから一年。まだ少し早いかもしれないけど、俺の気持ちはこの先ずっと変わらないから、お前がもうすぐ異動になるこのタイミングで言おうと思ってた」

「え……?」

すると課長は、スーツのポケットから何かを取り出す。


ケースに入っていて、中身の見えないものだったけど……それが何なのか、鈍感な私でも、ぴんときた。



そして。




「け……」

課長が言葉に詰まる。


け、



っこん?



どうしよう、胸がドキドキする。
でも、もちろん嫌じゃない。私も、課長と、結婚したい。


お願いします。言葉の続きを聞かせてください。



私の理想のプロポーズは。


こうやって指輪を渡されながら、旦那さんとなる人に、『結婚してください』ってまっすぐに言ってもらうこと。
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