強引上司の溺愛トラップ
私は緊張して、ふたりの顔をちゃんと見れず、俯きがちだった。



「じゃあ、先に課長から」

部長がそう言うと、男性のうちのひとりが、


「この度の異動で、融資課の課長として配属されました、桜　優（さくら　ゆう）です。よろしく」

と言葉を発した。


少し低目だけど、よく通る優しそうな声で、口調も落ち着いてた。


その声に少し安心して、そっと顔を上げると……



「!?」

怖っ！ ……というのが第一印象だった。



身長はかなり高く（百八十cm後半？）、百五十三cmの私からしたら、見上げる高さだ。

顔は、整った目鼻立ちに、キリッとした眉、銀行員らしい短くて清潔感のある黒髪はサラサラしている。たぶん、誰が見てもカッコイイと感じると思う。


でも、その鋭い目が、まるで睨むように私を見ているため、正直、怖い。



その視線に耐え切れず、私は数秒でまた下を向いてしまった。


眉間に深い皺もできていた。部下のことが嫌いな人なのかな……。


優しそうなのは声と、口調と。そして、『桜　優』という、『鬼』というアダ名からはかけ離れた名前だけだった。
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