強引上司の溺愛トラップ
桜課長の挨拶が終わり、部長がもうひとりの男の人にも、自己紹介をするようにと声を掛けると。



「一島 拓也(いちしま たくや)です! よろしくお願いしますっ」

と、元気良く挨拶された。

その元気につられるように顔を上げ、その人の顔を見ると……


(わあ……)


金曜日に、食卓で家族に話した、私の『男性の理想の外見』。

身長は、男の人にしては少し小さい方で、私よりやや高いくらい。

目は大きく、くりっとしていて、可愛い外見をしている。


目の前にいる男の子ーー一島くんの外見は、まさに私の理想そのものだった(おまけに名前も○也くん)。



「わ、渡辺 佐菜です。よろしくお願いします……」

課長への恐怖心や、一島くんへのドキドキによる緊張のせいにより、しどろもどろな挨拶を返すと。



「はいっ! よろしくお願いします‼︎」

と、一島くんに明るい笑顔で返される。


笑うと更にかわいい。八重歯がとくに。



……こんな人が、もし外見だけではなく、中身も私の理想だったら。『私の人見知りを理解してくれる人』だったら。


……そんなことも考えたけど、さすがにそこまではそれこそ妄想にすぎないと、すぐに頭を横に振った。
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