強引上司の溺愛トラップ
ようやくエレベーターが来たけど、その中でもまたふたりきりで。


そして、私から話を切り出すことは、やっぱり出来なくて……。



到着を散々待たされたエレベーターだけど、食堂のある六階へはノンストップで数秒で運んでくれた。


結局、エレベーター内では何も話すことなく、扉が開いた。



…気まずい思いをさせちゃったな。ただでさえ、入社したばかりなのに異動になって、不安な思いをしているに違いないのに……。


私なんかに気を遣って、たくさん話を振ってくれたのに。



「……ごめんね、私、人見知りで」

せめて謝罪だけはしたいと思い、エレベーターを降りながらそう伝えたけど、絞り出すように発したその声は、聞こえるか聞こえないくらいかの音量だった。一島くんからしたら私がボソッと何か言ったかな、くらいしか分からなかったと思う。


エレベーターが閉まる。


すると。



「全然大丈夫ですよ。人見知りの人って、俺はかわいいって思います」


……聞こえて、た……?


ていうか……。




かわいい‼︎!⁉︎




見た目も、名前も、雰囲気も、まさに私の理想の人。その上、私の人見知りのことを、理解してくれた。

私が先輩だから、指導係だから気を遣ってるだけかもしれない。でも。




私はうれしかった。


一島くんは、外見も中身も、本物の私の理想の王子様だ。
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