強引上司の溺愛トラップ
「あ」

お母さんの後ろの壁に貼られたカレンダーを見て、ふと思い出した。


「お母さん、来週の金曜日、歓迎会の飲み会あるらしいから夕飯いらない」

「 ああ、そうなの。帰りは何時頃?」

「分からないけど、二十三時くらいには終わるかな」

「神、その日の夜空けといてね。佐菜のこと駅まで車で迎えに行ってね」

「あいあいさー」

「神くんいつもごめんね、お迎え来てもらって」

「それはお互い様さ。俺も飲み会の時は迎え来てもらうし。それより」

神くんはニヤリと笑うと。



「飲み会って、気になる相手と接近するチャンスじゃないか? 職場よりゆっくり話せるし、プライベートな話もたくさん出来るし」

「接近⁉︎ だ、だから接近する気なんて……」

「理想の相手との理想のシチュエーションは何だっけ? 共通の趣味? そういう話、ちゃんとしてこいって」

「し、しないよ!」

一島くんがアプリゲームやってるようには見えないし、そもそも私の趣味がアプリゲームなんて知られたくないし!


お母さんも神くんも!私はほんとに一島くんとそういう意味でお近づきになりたいなんて思っていないんだから!



私は階段を上がり、自分の部屋へ向かった。



慣れない恋バナ(というほどでもないけど)をして顔も熱い。

私は窓を開けて、そのままベランダに出た。


「あー……」

ひんやりとした風が気持ちいい。



……でも、気になる人がいるっていうのは、確かに事実。


男性と話すのが苦手な私にとっては、正直少し苦痛だなと思うことがある職場の飲み会も、一島くんがいるって思うと、ちょっとドキドキする……。少し、飲み会の日が待ち遠しくもある。



顔を上げると、長い前髪の隙間から綺麗な星が見えた。
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