強引上司の溺愛トラップ

少し頑張ってみたいと思いました。

そして、飲み会の日がやってきた。



「お疲れ様です。ビールで大丈夫ですか?」


ゆっくり食事をとる時間もあまりなく、私はビール瓶を持って、上司の方たちの席へお酌に回っていた。


私はこの時間が大の苦手だ……。

同じ融資課の上司の方たちとはまだ話しやすいけど、普段なかなか話さない事務課や営業課の上司の方と、こういう時に何を話せばいいのか……って分からなくて焦ってしまう。


しかもお酒が入っているから、



「おっ、ナベさん! いつもコピー機ありがとうねー!」

「あ、いえとんでもないです……」

「ナベさんも飲んでる⁉︎」

「は、はい少し……」

「もっと飲めよー! 口移ししてやろうか⁉︎」

「え⁉︎」

そう言って、事務課の係長が私に唇を近付けてくる。

さすがに本当にキスされる訳はないと分かっていても、ちょっと、困る。こういう時に、上手にかわせる女性なら何とも思わないんだろうけど……。


すると、その時。

「お疲れ様です。融資課に新しく配属されました、一島です。よろしくお願いします!」

後ろから、一島くんがビール瓶を手に、係長に声を掛けた。
< 37 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop