強引上司の溺愛トラップ
「……俺、課長に何かしましたかね?」

一島くんが心配そうな顔で私にそう聞いてきた。


「そんなことないよ。絶対に何もしてない」

「そうですかね……あ、渡辺さん、コップが空ですね。ささ、どうぞ」

「あ……でももう結構酔ってるかも。課長にももう飲むなって今言われたし」

「でも、せっかくですからちょっとだけ」

「じゃ、じゃあちょっとだけ」

私がコップを差し出すと、一島くんはビールを注いでくれた。



ああ…このビール、もったいなくて飲みたくない。このまま家宝にしたい。という訳にもいかず、美味しくいただきましたけど。



そんな中、私は再び、神くんの言葉を思い出す。


『理想の相手との理想のシチュエーションは何だっけ? 共通の趣味?』



…いやいやいや。そんな話、出来る訳ない。そもそも恥ずかしすぎて一島くんの趣味を聞くことすら出来ない。だって、『何でこの人、俺の趣味なんか聞くんだ? 気があるのか? 嫌だな』とか思われたらどうすればいいのか……!



とか色々考えてたら、急に一島くんが。


「そう言えば、渡辺さんの趣味って何ですか?」

「え⁉︎」

「え? 俺何か変な質問しました?」

「う、ううん! そんなことない……!」

急にビンゴな質問をされて、凄くビックリした。

でも、うれしい。そりゃあ、一島くんには他意がないのはちゃんと分かってるけど。
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