強引上司の溺愛トラップ
「……いえ。二つ先の駅ですが」

「そうですか。今乗ってきた電車が終電ですよね? 俺、車で送りますよ」

そう言ってくれるが、ここから家までなら別にタクシーでも構わない。渡辺も、兄にもたれかかってすっかり寝ているし、早く連れて帰ってもらった方がいいだろう。
そう思い、その誘いを断るが。


「いいんですよ。こんなになっちゃった佐菜が悪いんですし。ぜひ乗っていってください」

「いや、でも……」

「あ、そうだ。良ければご自宅までの道中、佐菜のことをここまで送ってくれたお礼に……



家族しか知らない、佐菜の小さい頃のエピソードとか、その他もろもろたくさんお話しますよ」

「!!?」



渡辺の兄は、にーーっこりと楽しそうに含み笑いをして俺を見る。



……まさか、さっき一瞬だけ渡辺の寝顔に見とれてたのを車の中から見られてた!?
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