強引上司の溺愛トラップ





頭が痛い……。


気付いたら朝だし、気付いたら見覚えのある天井……ていうか、自分の部屋の自分のベッドの中だし。



夕べの記憶が途中までしかない。ええと、課長と駅まで行って、一緒に終電乗り込んで、それから……。



「おーう。おはよー」

色々考えていたら、部屋の戸が空いて、神くんが顔を出した。



「あ、神くんおはよう。あのさ、私夕べの記憶があんまりなくて、えと、神くんが送ってくれた……んだよね?」


私がそう聞くと、神くんは「そうだよ」と答える。だからちょっと安心したんだけど。


「駅まで佐菜を連れてきてくれたのは課長さんだったけどな」

「やっぱり⁉︎」

私はベッドから飛び降りて、近くに置いてもらってあったハンドバッグの中から慌てて携帯を探す。

「あああよりによって課長の前で寝落ちしちゃうとか…! どどどどうしよう…!」

ああもう! こんな時に限ってなかなか携帯が見つからない。



だけど、慌てる私とは対照に、神くんはのんびりとした口調で言った。


「そんなに気にしてなかったし、月曜日にお礼言えばいいんじゃない?」

「で、でも……」

「まあ終電ないからタクシーで帰ったみたいだけど」

「! やややっぱりお詫びを……! ていう
切腹を……!」

「ああ、ウソ、ウソ。そんな遠くない先だったから、俺が車で送ってった」


タクシーで帰った訳ではないっていうのには少し安心したけど、それでも迷惑を掛けてしまったということは変わらない。



私はようやくバッグの奥から携帯を見付けた。


……あ、でも課長の電話番号、まだ電話帳に入ってないや……。
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