強引上司の溺愛トラップ
「けど、いいじゃねぇか。お前みたいなのを彼女にしたいって言ってくれてるんだからよー。いつかは嫁にもらってくれるってことでもあるんじゃねーの? ありがたいことじゃん」

フォークに巻いたパスタを豪快に食べながら、日路くんは変わらずめんどくさそうに、そしてどこか投げやりにそう話した。

……そんなにこの話はめんどくさいのだろうか。そんな極論に近い形でまとめようとしないでくれ。


大体、課長と結婚なんて、全くイメージ出来ない。



「……あ、寧ろお断りしなきゃいけないようにしか思えなくなってきた」

「何で」

「結婚して、子ども産んで、課長と幸せに老後を暮らしてるイメージが出来ない」

「真面目か。誰もそこまで考えて誰かと付き合ったりしてねーだろ」


日路くんは呆れた様子でそう返した。

そういうもんなのかな……誰とも付き合ったことないから、とりあえずなるべく色んな想像をして、総合的判断をしたいと思っていたんだけど。



「ま、とりあえず早太にも神にも誰にも言わねぇから、告白については自分でケリつけなって」

そう言って日路くんは、空になったパスタの皿をテーブルの脇に移動させた。

ケリか……。そりゃ、私自身の問題なんだから、本来は私が考えるべきことなんだけどさ……。


「で、ここは奢りだろ? 佐菜の」

「え⁉︎ 何で⁉︎」

「呼び出したのそっちだろ!」

「何のアドバイスもしてくれなかったじゃん!」


……こういう口ゲンカは、昔から私が負ける宿命となっている。
私は自分と日路くんのふたり分の支払いを済ませると、頬を膨らませながら日路くんを睨み付け、家まで帰った。
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