強引上司の溺愛トラップ
そうは言っても……


「お、お気持ちは嬉しいのですが……っ」

課長がご自身の気持ちをきちんと私に伝えてくれたのだから、私も、自分の気持ちをはっきり課長に伝えなければいけない。


課長の気持ちはありがたいし、寧ろこんな私を好きになってくれる男性なんてもう二度と現れないと思う。
それでもやっぱり、急に課長のことを恋愛対象としては見られそうになかった。



でも。

「気持ちが嬉しいなら、付き合って」

開き直った課長はかなり強引です。


「えと、その、私は」

「付き合って」


……ワ、ワガママですか⁉︎



「……そっ、そう言えば、午前中に営業課から預かった書類なんですが、金利の箇所が空欄で…」

「ああ、それなら俺のとこにあるファイルに参考資料が載っててーー、というか、融資課に持ってくる前に営業課で書類完成させろって伝えとけ」


……話を逸らすため、とっさに別の話題を振ったのだけど、私はふと気付いた。

私、課長とは他の男性よりもやっぱり話しやすい。この間はお酒が入っていたけど、お酒の入っていない今も、そう思う。もちろん、「お兄ちゃんたちと話してるみたいだから」っていう理由は変わらないんだけど。

でも、理由はどうあれ、この私が男性とこんなに普通に話せてることは、奇跡に近い現象かもしれなかった。

それなら、この人とお付き合いをすることが、自分にとって最高の幸せになるかもしれない……とも思ってしまった。



でも、でもやっぱりーー……



(理想の人とは違うんだよなぁ……)

そう思ってしまっている自分がいた。
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