強引上司の溺愛トラップ

「あ、渡辺さん」

営業室に戻ると、一島くんがちょっと困ったような表情で私に話し掛けてきた。


「どうかした?」

「あの、この案件の実行なんですが、入力コードが分からなくて…」

「ああ、それはね……」



……失恋したばかりなのに、一島くんとは思いの他、普通に話せていた。

まあ、一島くんには私の気持ちは気付かれていないし、まだ知り合ったばかりで好きになりすぎる前だったからというのもある。

でも何より、今は一島くんのことよりも課長のことで頭がいっぱいだからかもーー……。



……課長のことで頭がいっぱい?


「あ、出来ました! 渡辺さん、これで合ってますか?」

「ち、違う!」

「え、違いますか!?」

「はっ、違う! 違くない! 違うのが違う!」


課長のことで頭がいっぱいっていうのは、そういう意味じゃない!単に、告白されて驚いて、どうお断りするか考えてばかりっていう、そういうこと!
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