強引上司の溺愛トラップ
「え?」

「お前に好きになってもらえるように男らしく振舞わなきゃって思うのに、こんな風に介抱してもらってるとか」

課長は再びベッドに仰向けになり、右手の甲を両目に充てながら話した。

顔を、見られたくないんだろうか。


「……課長の言う、男らしく、って何ですか?」

「……酒に強いとか」

「そ、それは関係ないですよ! 体質とかあるんですから!」


会社の飲み会では全然酔わなかった課長がこんなに酔っ払ってしまったことに少し違和感はあったけど、まさかそんな事情があったなんて……。



「……初めてだから。こんなに人を好きになるの」

「……っ」

「だから、どうやって振る舞うのが正解なのか、よく分からない。一島と俺、どう見てもタイプが違うし。結果、カッコ悪いところだけお前に見せてる」

「そんなこと……」


どうしよう……。



何故か、嬉しさがある。




「……課長」

私は、気付いたら自分の右手でそっと、課長の顔の上にある右手に触れていた。
自分から男性に触れるなんて初めてだった。こんなにも、自然に。



そして……。


「……課長からの告白、真剣に考えますから」


これも、自然と出た言葉。

でも、心からの本音だったと思う。



課長は右手を顔から外し、私を見つめた。

私も、男性と視線を合わすのは恥ずかしいけど……この時は、しっかりと課長の目を見た。
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