強引上司の溺愛トラップ
「……出ていいですか」

「早くしろ」

「は、はいっ!」

確かに雰囲気は壊してしまったけど、私のせいじゃないのに、何でそんな命令口調なんだ。


とにかく、早く電話に出なきゃ。


ディスプレイには、日路くんの名前が。
何だろう、珍しいな。


「もしもし日路くん、どうしたーー」

【佐菜ァアァ〜〜!】


……げっ。凄い酔ってる。

声を聞いただけで一発で分かった。いつもは割とボソボソした感じで話す日路くんがいきなり大声を出す時は、百パーセント酔ってる時だ。
声が大きすぎて、多分課長の方にまで日路くんと声は漏れてる。


「もうっ、酔ってる時にいきなり電話してくるのやめてよ!」

【酔ってねーし! つーかよぉ、お前、金曜日の夜なのに一発で電話に出るとか、暇なのかよ?】

「し、失礼な! 今は人と一緒にいるから暇じゃないもん!」

【人ぉ? まさかこの間告られたとかいう上司とじゃねーだろうな?】

「えっ……」

日路くんの声は、相変わらず大きくて響く。


【そんな訳ねーよなぁ。課長だけはありえない!とか言ってたもんなぁ】

「そ、そんなことは言ってなーー」


まぁいいや、じゃぁなー。と言って、日路くんは一方的に掛けてきた電話を一方的に切った。



……私はおそるおそる、課長の方を見る。


課長は明らかに不機嫌な顔で私を見つめていた。



「あ、あの、その、今のは兄で……」

「そこじゃねぇよ」

「で、ですよね」

「……ムカつく! キスさせろ!」

「わー! 待って待って! ダメですー!」

「さっきはそういう雰囲気だっただろうが!」

「今は違うー!」


……何とかキスされるのからは逃げられたけど、やっぱ課長は強引で、理想とはかけ離れてるよー!


……でも、気になっているのも事実で。



理想とかけ離れてる私の恋は、これからどうなっていくんでしょう?
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