イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
4人で暮らし始めて、1週間。草壁さんの素性をあえて訊く気もなかった。


吹雪の言葉は無視したが、来亜の言葉には耳を傾けた。

「いつまで、4人で暮らすつもりですか?悪いコトは言いません。今すぐに草壁さんだけでも部屋から追い出して下さい」

「一緒に住もうと言ったのは俺の方だ。来亜」

「岩佐さんの後輩とは言え、謎が多すぎます!!」

「『インターナショナル香港』の買収の件が上手くいけば、今後は仕事を頼まない。それでいいか?」

調子の良い性格は玉に瑕だが、彼の有能さには惚れていた。

「俺は社長の身が心配なんです」

「なら、お前だけでも戻って来い」

「・・・分かりました。今夜は帰ります」

内線電話が響く。


「もしもし、こちら社長室です」

来亜は気を取り直し、受話器を取って応対した。


――――草壁さんから外線です


「草壁さんから外線?」


俺は受話器を取った。


「どうしたんですか?草壁さん」


―――――お久しぶりです。周防社長
芦沢です・・・


死んだはずの芦沢から電話がかかって来た。


背筋に悪寒が迫り上がり、全身が震える。

「ほ、本当に芦沢か?」


―――――そうです。芦沢浩介です


電話越しにキッパリと言うと芦沢が黙ってしまった。
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