イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
多賀に誘われ、ベンチに座ると静かに話を始めた。

「俺は貴方の言われた通り、周防会長と政界の癒着について調べていた」

「癒着の証拠となるデータの一部も手に入れた」

「そのデータを菜穂に託したのか?」

「そうだ。でも、そのデータを使って周防会長を強請ろうと企てた仲間に事故に見せかけられ、車ごと東京湾に沈められた」

「警察はお前を事故死と断定した。お前の事故死には不審な点が多かったが。俺もお前は死んだと思っていた。1年半、お前は何をしていた?」

「とある男に助けられた。でも、事故のショックで記憶喪失。記憶を戻すのに、1年かかった」

「お前を助けた男は何者だ?」

「男は要人の秘書。名前は分からない。男は俺にこう告げた。
貴方は国の重要機密を盗み出したと」

「国の重要機密?」

「記憶のなかった俺は何を言ってるのかさっぱりわからなかったが。記憶を戻した今考えると一部とは言え、国が何かの形で関わっているんだろう。俺はデータの危険性を考えて、関わるなと言いたかったんだ」


「芦沢・・・」

「そのデータを盗み出した以上、貴方はそのデータを悪用しようと狙う輩に狙われると。男は俺に新たな戸籍を与えてくれた」


「お前は顔を整形して、別の人間として生きてるのか・・・」

「記憶のない間に、俺は一人の女性と恋に落ちて結婚したんだ」

多賀は左薬指に嵌った銀色のマリッジリングを見せる。




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