イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「俺が会うように指示しました。
全ては菜穂さんの為に」

「私の為?」

「貴方のお兄さん・芦沢浩介は裏世界では有名な情報屋で、その腕を買い周防社長が叔父である『周防ホールディングス』の周防会長の過去の悪事を暴こうと調べさせた。芦沢は、会長のパソコンに不正にアクセスし、データを盗み出したんです。そのデータは国の重要機密も含まれていました。
でも、芦沢浩介は仲間に裏切られて事故に見せかけられ、車ごと東京湾に沈められた。俺は殺されかけた芦沢浩介を助け、データの在処を訊き出そうとしたが、彼は記憶喪失で訊き出すコトが出来なかった。
記憶を戻した今…ようやくそのデータの在処を知ったと言うコトです」


「でも、彼は口を割ろうとしなかった」

結愛さんがポツリと呟くと更に倭人さんは言葉を続けた。

「ようやく、貴方をダシにして、周防社長に告白したと所を盗聴し、周防社長よりも早くデータを手に入れるべく戻って来たんですよ」

「・・・」


「周防社長は自分のせいで芦沢は死んだと思い込んでいましたから。貴方にはどうしても伝えたい言葉があると嘆いていました。芦沢が生きて現れ、ようやくその足枷の思いから解放される」


「私に伝えたい言葉ですか?」

「そうです。楽しみしていて下さい」


「お二人が元は恋人同士と言うのも嘘ですか?」

「そこは・・・」

倭人さんと結愛さんが顔を合わせた。


「ホンモノです。
データの回収が終わるまで、出来れば俺達の素性は周防社長には内緒にして頂きたい」

「わ、分かりました」


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