イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「柊に渡したSDカードにその当時の公共事業費の改ざんデータの一部が入っていると言うワケだな」

「これは父が芦沢の父親から盗み取った資料をデータ化したもんだ。
先代の会長は芦沢から奪った資料を全て破棄しろと父に命令したが、父はその資料をデータ化して、自身のパソコンに保存していた」


芦沢は知らぬ間に、父親の資料を奪い返したんだな。


「芦沢に盗み出される以前に、このデータを盾に莉人の父親は総理を脅しにかかったんですよ。父親の行った不正ですが、これが明るみに出れば、内閣は解散、総理は辞職に追い込まれる」


柊が莉人に代わって話を始めた。
莉人は思い詰めた顔で自身で杯に酒を注ぎ、一気に煽った。


「俺は総理を守る為に、周防会長の刺客に殺されそうになった芦沢を救った」


「芦沢を救った要人の秘書官とは柊か・・・」

「俺は彼を救いました。彼からデータの在処を訊き出そうと思いましたが、彼は記憶を失ってしまって・・・それに俺は彼に信用されていないか…記憶を戻してもデータの在処は教えてくれませんでした」


「俺に今日・・・芦沢を引き合わせたのは・・・」

「俺が貴方と菜穂さんのコトをダシに彼を説得し、会うように言いました」


「でも・・・そんなコトをしなくて莉人が貴方の秘書から受け取っていた。貴方は実に有能な秘書をお持ちだ」

柊の言葉の含みに揶揄を感じ、眉を顰める。


「既に周防会長のパソコンの改ざんデータの消去も完了している。このデータを処分すれば、俺の秘書官の仕事はおしまいだ。莉人、先に失礼しますよ」

「倭人・・・」







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