イノセントラヴ～不実な社長と契約結婚～

「凄い・・・」

「…お前には縁のない世界か・・・」

「はい」
私は素直に答えた。

毎日、馬車馬のように働く私には全くご縁のない世界。

彼は慣れた所作で、私をエレベーターホールまでエスコートした。
「秘書さんは？」
「あ…吹雪は適当に一人で食べるだろう。ディナーは俺とお前の二人だけだ」
「私と社長の二人ですか・・・」
「芦沢菜穂お前は俺のコト嫌いだろ？」
エレベーターを待っていると思わぬ質問を投げかけられ、返事に戸惑った。

「あのビルで働く女たちは皆、俺のコトを熱い目で見るのに。お前と言えば、全く見向きもしない不思議なオンナだ」

彼は私のコトを知っていた。

「それは・・・」

「キスしても…まぁ―あれは事故だと思ってくれ」
「事故って…あれは私の・・・」

「来たな。乗るぞ」

周防社長は再び私の肩を抱き、エレベーターの中に乗り込む。