イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「では、行きましょうか」

「ああ」

別の部屋に宿泊する倭人さんが私達の部屋を訪問。

『周防ホールディングス』香港支社のオフィスに赴き、先に現地入りした莉人さんと合流する。

私は観光で香港まで来たけど、悠真さんはあくまでビジネス。
私との時間はその合間の余暇でしかない。


「来亜、菜穂を頼んだぞ」


「はい」


「では、行って参ります。菜穂さん」


「悠真さん、倭人さんいってらしゃい」


私は来亜さんと共に二人を見送る。悠真さんのスーツの広い背中を見つめ、瞳の奥が熱くなる。閉まったドアを暫し見つめ、吐息が漏らした。



「これは仕方がないですね。社長にとって社を左右する大事な商談ですから」


来亜さんは眼鏡をずり上げて私を諭す。


「わ、わかっています」


「どこに行きたいか?言って下さい。貴方の行きたい場所に行きますから」


来亜と私の相性は限りなく合わない。吹雪さんの方が良かったと思うけど、彼をフッてしまったし。


「早くしないと。時間がなくなくりますよ」

私は来亜さんに急かされ、ガイドブックを捲り、行きたい場所を告げた。
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