イノセントラヴ～不実な社長と契約結婚～

「追うよ」

私達の姿を見るなり、来た道へと逃げ込んでゆく男性。倭人さんは私の手を握り、細い路地へ入り、必死に男性の行方を追う。

人の気配のない通り。雑踏の中を歩いていると安心するけど、無人の通りの不気味さにカラダが硬くなる。

「大丈夫だよ。俺が居る」

倭人さんは、この閉塞的な空間に狼狽える私に優しく囁いた。


自身のスマホをGパンの後ろポケットから取り出し、位置を確認する。


「スマホは諦めるしかないね。とりあえず、警察に盗難届を出しておこう」


「あのスマホには悠真さんとの沢山の写真が・・・」


「ここは日本じゃない。日本のように治安は良くないんだよ」


初めての海外で舞い上がっていた自分が悪いんだ。


「行くよ」


「！！？」


私達は知らずの内に男4人に取り囲まれていた。

人相の悪い日本で言えば、ヤクザ風。


倭人さんが私を護るように前に立ち塞がったくれたが、人数で負けてしまった。一人の男性が振りかざした鉄パイプで後頭部殴られ、額から血を流してその場に倒れた。


「倭人さん！？」