イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
莉人さんと悠真さんの母親は看護師の誘導で別の部屋へと案内されてゆく。


「悠子様と俺の父とは連絡を取り合う仲で」

「田中さんと?」

「俺の父がずっと悠真様の面倒を見ていました。父が周防家の執事だったコトは知っていますよね」

「はい、最初に悠真さんの口から訊きました」

二人が献血している間、来亜さんが悠真さんの母親・長野悠子(ナガノユウコ)さんのコトを話してくれた。

悠真さんの母親は京都の祇園に本店を持つ江戸時代から続く老舗料亭『吉兆庵』の経営者。

「二人が引き離された事情は吹雪さんから訊きました」

「吹雪から訊いていたのか・・・」

「はい」


「悠真様が自分を金で捨てた悠子さんのコトを恨んでいるコトも?」


「はい」


事情が事情だけど、この世に産んでくれた母親を恨むのは・・・悠子さんの立場なら悲しいだろうなぁ。

「香港に仕事で来るコトも父から訊いていました」

「・・・」

「悠真様は口では憎んでいるとは言ってますが、それは愛情の裏返しだと思います。
悠真様は熱を出せば決まって「母さん」とうわ言のように呼びますから…本当は憎んでないと思います」


「来亜…さん」


「父も二人には仲良くして欲しいと願っています」


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