イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「一郎兄さんが亡くなってもう7年。一郎兄さんの遺言では悠真お前に当主の座を継がせると明記されていた。
だが、我々はそれを無視し、周防家の一番の実力者の三郎に当主代行をさせていた。
その三郎も死んだ。悠真…お前が一郎兄さんの愛人の子供だから、反対しているわけではないが、周防家の調和を保つため、お前には当主の座を放棄して欲しい」


「莉人を当主にするのか?」



「三郎は莉人を周防家の当主にしてくれと遺書を残していた。私はその願いを兄として叶えてやりたい。悠真お前では周防家は纏められない」
元々俺は周防家にとって邪魔な存在で疎まれていた。


「悠真お前には申し訳ないと思う。副当主として、莉人を影で支えてやって欲しいんだ。莉人は一見、芯が強そうに見えるが、心は繊細だ。三郎の自殺で相当ショックを受けていると思う」


俺は赤子のように泣く莉人を見るまで自分よりも強い人間だと思っていた。

でも、あの涙で莉人の心の繊細さと脆さを知った。


「当主の座は放棄する。そのかわり、俺と芦沢菜穂の結婚は受け入れて欲しい」


「お前は全てを知っているんじゃないのか?」


「知ってる。でも、俺と菜穂の結婚は彼女が俺のプロポーズを受け入れた時の話だ」


「国からの圧力、一郎兄さんも『周防ホーディングス』を大きくする為に必死だった。そして、三郎だって・・・
三郎がマフィアと取引して、お前を殺そうとしたのだって・・・莉人を愛するが故のコトだ。三郎は莉人の母親である里佳子さんを心から愛していた。里佳子さんが命を削って産んだ莉人のコトだってとても愛していた」















< 223 / 235 >

この作品をシェア

pagetop