イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
来亜さんが悠子さんを病室に連れて来た。


5歳の時に引き離され、二人が顔を合わせるのは26年振りだった。


「悠…真」


悠子さんは悠真さんの顔を見た途端、右手に持っていた写真が床に落ちた。
私は知っている。

悠子さんがずっと悠真さんの写真を持ち歩いているコトを。

何度も見返し、ボロボロになり、色の褪せた写真。

私は拾い上げて、悠真さんに見せた。

「この写真に見憶えありませんか?」


「何だよ!?ボロボロじゃないか・・・」

「悠子さんはいつもこの写真を見て、悠真さんを想っていたんですよ」

悠子さんは両手で顔を覆い、泣き崩れる。


「おい、5分しか時間無いのに、泣いてどうするんだよ!?」


悠真さんの黒い瞳にも涙が滲んでいた。


「悠真様、5分と言わず・・・」


「俺はもう5歳じゃない。
俺はもう31歳だ」


「何を言っているんですか?もっと他に言うコトあるでしょ?」


来亜さんは悠真さんのチンプンカンプンな言葉にヤキモキする。


「…ずっと…会いたかったよ…母さん」


悠真さんの瞳から涙が零れ、頬を伝っていく。


「悠真・・・」


悠子さんは立ち上がり、悠真さんを腕の中に抱き締めた。


私と隣の来亜さんも二人の涙に釣られしまった。


「ようやくこの日を迎えましたね…悠真様」


来亜さんは眼鏡を外し、自身のハンカチで涙を拭った。










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