イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
社長を悠真様と呼ぶ田中さんは唯の管理人ではない。

「田中さんと社長はどういう関係ですか?」

「田中さんは周防本家の元執事。今は、このビルの駐車場の管理人として働いている」


管理室の奥に入るとエレベーターの両扉が見えて来た。

エレベーターのボタンが表示されている階は52階だけ。


「ここって・・・『B.C.square TOKYO』?」


「気づくのが遅いぞ…お前」

「すいません」

謎の52階フロア。
ビルの何処かに52階直通の専用エレベーターがあると訊いていたが、管理室の奥に存在したんだ。

「52階は何処の社長様が購入しているともっぱらの噂でしたが…このビルのオーナーの周防社長のお住まいだったんですか・・・」


「今夜からお前もそこに住むんだ。菜穂」
社長は、何度も呼んでいたかのように自然体で私の名前を呼ぶ。

「…そ、そうでしたね・・・」
社長に名前を呼ばれ、ドキッとした私は返事をタイミングを遅らせてしまった。

「早く乗れっ」


周防社長が右腕を引っ張り、エレベーターの中に引き込んだ。


私達3人を乗せた金属の箱がまっずぐに52階へと上がってゆく。





< 23 / 235 >

この作品をシェア

pagetop