イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
ドアを乱暴に開けて、私を引き摺り込む。


「ち、ちょっと・・・」


そして、目の前の黒のレザーソファへと強引に座らせた。


「貴方も私の兄のコトを知っているんですか?私はずっと兄のコトを捜しています。もし、知っているなら、何処に居るか教えてください」


「俺はお前の兄貴・芦沢浩介(アシザワコウスケ)とは顔見知りだが、俺もお前の兄貴の行方を捜している。俺の方が何処に居るか教えて欲しいな。
ヤツは俺の会社の重要機密を盗んだんだ」


「えっ!?」


「まぁ、こっちにはヤツの妹であるお前が居る」


周防社長は妙に艶めいた目で私を見つめる。


「3億なんて…世界を股に仕事をする俺にしていれば、大した額じゃない。でも、お前にすれば・・・一生かかっても返済できない。大金」


「この契約結婚は期限付きだと言いましたよね」


「言ったけど、少し気が変わった」
周防社長は声音が冷たい響きに変わった。
また…キスされるっ!!?
私の隣に腰を下ろして、手を伸ばして来る。車内では不意に奪われた唇。
私は彼から離れようと腰を浮かせた。


「酔い覚ましのコーヒーがいかかですか?周防社長」


タイミング良く吹雪さんが部屋に入って来た。
吹雪さんの登場で周防社長の動きがピタリと止った。
そして、眉を歪めて吹雪さんの方を振り返った。

「呼んでもないのに、無断で入って来るな!吹雪」

「彼女は大切な花嫁ですよ」


「それは分かってる・・・彼女は会長の叔父さんをも唸らせる最適な女性だ。吹雪、彼女をゲストルームに案内しろ」


「菜穂様、俺が貴方のお部屋に案内します」


「え、あ・・・」


「俺に襲われたくなかったら、さっさと行けよ」


「では失礼します・・・」
私は吹雪さんに付いて行った。



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