イノセントラヴ～不実な社長と契約結婚～

悠真side～

不動産業界は元々都心の土地を大量に保有した旧財閥企業が多い。
『周防ホールディングス』もその典型的なモデル。

俺が社長を務める会社は『周防ホールディングス』の子会社に過ぎないが、優秀なコンサルタントの力を借りて、赤字だった会社を立て直し、世界有数のビルを次々と買収し、新規事業にも着手した。


「起きて下さい。社長」

優しい物腰の声を微睡の中で訊く。

俺を捨てた母の声に似ていた。


目を開け、カラダを起こすと菜穂の真っ赤な顔が瞳の中に飛び込んで来た。

「お、お前！？吹雪は？？」


「わ、私、先に戻ります」


カラダを起こすと背中を向けて、部屋を飛び出して行った。

「何だよ！？アイツ」