イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
父が亡き後、俺を養育してくれた会長の兄・周防次郎夫妻。今は『周防ホールディングス』の社長を務めていた。

叔父もまた父の血を受け継いで厳しい人だったが、会長程じゃない。若い時は、社長以上にやり手で、次男を差しおいて、会長に就任した。そこから垣間見えるように周防家は実力主義。

周防一族自体が互いにけん制し合った雰囲気だ。血の繫がりだけで信用出来ぬ相手ばかり。

一族の集まりには自然と足が遠のいていた。

「菜穂様とのご結婚は友井頭取の令嬢との見合いを回避する為のモノですよね」

「そうだ。お前は一番知ってるだろ?俺が結婚願望0だって」

「存じていますが、菜穂様を妻に選ぶのはどうかと」

「叔父に対抗する為だ。俺が今まで知らなかった自社の機密を芦沢を通して、手に入れた。真にこの『周防ホールディングス』の頂に立つのはこの俺だと言いたいんだよ」


「彼女の兄である芦沢は社長に殺されたようなモノ。そして、芦沢の妹と結婚して、会長を脅かすなんて人が悪いですね」

「何とでも言え」


「吹雪から訊きましたけど、二人の結婚は期限付きだとか」

「どう言った形で、芦沢は菜穂に機密を託したかは謎だ。その謎が解ければ、菜穂は用済み。離婚だ」


「離婚ね・・・その割にはキスしようとしたり、本物の新婚さんのようでしたね」

「菜穂の反応が見たかったんだ。無駄口はそれ位にして仕事だ」


俺はデスクに積まれた書類を手に取り、目を通す。




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