イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「・・・」

部屋に残されたのは私と周防社長。

周防社長は黒い髪を掻き毟り、苛立った様子。

盛大な溜息を漏らし、肩を落とす。私が知る社長はいつも自信に満ち溢れ、凛々しい姿だった。
社長を失望させたのは私の失態のせい。

私は布巾で必死に書類を拭いた。でも、コーヒー色に染まった書類は使い物にはならないだろう。

「本当に申し訳ありません」

私は項垂れる周防社長に頭を深く下げた。


「3億」

社長は私に向かって吐き捨てる。

「この商談の損失だ」

自分には全く縁のない数字に言葉を失くした。
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