イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
昨日の俺の暴挙はなかったのように、菜穂は笑顔を向けた。


「おはようございます。悠真さん」

「おはよう」
俺も何事もないように振る舞う。


「今朝の朝食は洋食メニューにしました」

「そうか」

菜穂は湯気の立った温かいコーヒーのをマグを置く。

「大事な商談の時も、そっとコーヒーを置いて欲しかったな」

「あの時はす、すいませんでした・・・」

菜穂は俺の皮肉を謝って返す。


俺は奥歯をキリッと噛み締め、後悔する。


俺はずっと彼女に近づく方法を考えていた。

商談の失敗は想定外だったが、ポールのおかげでトントン拍子にコトが運んで、彼女は俺の妻となった。

プロポーズして、妻にする理由は何もなかったが、強引に叔父から勧められた見合い話を断る為だけに菜穂を俺の妻に仕立て上げた。


叔父の蒼白した顔は最高だった。


俺も彼女に習い、昨日のコトはなかったように平然と振舞い、コーヒーを喉に通すが、心はやりきれないキモチで一杯だった。


本当は彼女に愛して欲しいと思っているのだ。




< 58 / 235 >

この作品をシェア

pagetop