イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
悠真さんは私の嘘を鵜呑みにして、全く疑わなかった。

彼を騙しているようで、良心が痛む。


「お前は俺にどうして欲しいんだ?
お前を満たしてやるよ」


「え、あ…私は・・・」

「遠慮すんなよ。これは取引だ。お前が機密を持っている限り、立場は菜穂の上だ。俺は芦沢から託されたその機密をどうしても手に入れたい。だから、お前が俺にして欲しいコトを言うんだ。
俺は何でもやってやる」


悠真さんと私の立場が逆転した。それでも、悠真さんは兄が手に入れた機密が欲しいんだ。


「で、では・・・その・・・」


「来亜お前は下がれ」

「分かりました」

来亜さんは救急箱を持って、自分の居住スペースに引っ込んだ。

私と悠真さんがリビングに残される。


悠真さんは考え込む私を他所にソファから立ち上がって、美しい絵画のような夜景を隠すようにカーテンを閉めた。


「まぁ、いい。
俺はオンナを喜ばせるコトは得意だ」


悠真さんは私の隣に腰を下ろし、私の濡れた髪にそっとキスを落とす。


「お前の心もそしてカラダも全部満たしてやる」


悠真さんの声のトーンが甘く響き渡り、カラダ中が熱を持ち始める。


「初心な感じがいいな」
私の反応に悠真さんはクスッと笑う。
「菜穂、俺はお前のモノだ」
彼は私の表情を伺うように見つめ、頬に手を掛けてそっとキスして来た。

初心な私に合わせた唇を重ねるだけのキス。
私の心は既に彼で満たされている。全部、奪われるのは時間の問題だ。
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