イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「スイートルームって・・・お仕事は?」


「夜は会食だが、夕方まではフリーだ」


悠真さんが腰を下ろしたのを見て、従業員が冷水と黒の上質な革張りのメニューを運んで来た。

「コースはこのプレミアムコース。ワインはいつもの。彼女にはオレンジジュースを頼む」

悠真さん、メニューには一切目を通さず、オーダーした。


「畏まりました」


悠真さんは少しネクタイを緩め、冷水を口に含むと、またスマホを弄り始めた。


スイートルームをリザーブした意味が分からない程、馬鹿じゃないけど。

突然、そんなコトを言われても、「はい、そうですか」とカラダを差し出せない。


「困ります」

「何が困るんだ?」


「あの・・・えーと・・・いきなり、スイートルームと言われても・・・」

「極上の気分を味合わせてやってんだ。
俺にもその気分を味合わせろよ。お前の裸見たのは初めてじゃない。そう恥ずかしがるな」

彼はテーブルに頬杖を付き、くぐもった声でそう呟いた。

見事な色に茹でられたタコのように全身が真っ赤に染まる。


「初めてじゃないのは分かってるし、ちゃんと優しくリードしてやる。だから、安心しろ。菜穂」

私はその行為自体に抵抗感じているのに。
悠真さんにならいいと思うけど、彼は目的の遂行の為に、私に尽くすだけで、愛してるとかそんなんじゃない。

それでも、幸せを感じる私は愚かなオンナだ。

< 75 / 235 >

この作品をシェア

pagetop