ドリーミィ✡ マジカリア
救いの手
天野百合は、とても大人しい子供だった。
いや、『大人しい』と言うのは、適切な表現ではないかも知れない。
何故なら、 天野百合は、『大人しい』の一言で終わるくらいの軽度な無口ではないからだ。
ただ、無口と言う字の如く本当に何も喋らない。
それだけだが。それだけなのだか。
たかが、それだけの事で周りの人間の態度はがらりと変わる。
彼女はそんな自分の性格を嫌っていた。
無口で、何も喋らない。
無口で、何も喋れない。
そんな自分を、ことごとく嫌っていた。
勿論彼女は生まれつきそんな性格だった訳ではない。
彼女なりの理由があるのだ。
まぁ、その事については後々明かされる訳だが。
誰がなにを聞いても、何も答えない。
否、答えられない。
それは、何も知らない人間から見れば無視されているように見えるだろう。
だから、苛められた。嫌がらせを受けた。
なんとなく。気にくわないから。
そんな些細な理由でも苛めは簡単に勃発するのだ。
彼女は、自分の家族にも口数が少なかった。
でも、家族には必要最低限の事は喋る事は出来た。
だが、苛めの事については家族にも言わなかったのだ。