運命の歌
堺先生が赴任してから早数ヶ月。
もう夏休みだ。
秋の校内合唱コンクールに向け
音楽の授業では
歌うことが多くなってきた。
そしてパート分けももちろんある。
ひとりずつピアノの脇に立って
サビのワンコーラスを歌うというものだ。
もちろん声が小さいとやり直し。
いじめられっこのわたしは
みんなの笑いものになるだろう。
なんで学校に来たんだろう。
緊張で冷や汗はダラダラ、
後悔でお腹も痛くなってきた。
とうとうわたしの順番だ。
ピアノの脇に立つ前から
教室からはくすくすと笑い声が聞こえる。
どうせわたしは歌い直しだと
思われているのだ。
いじめっこへの怒りをバネに
羞恥心も吹き飛び、
わたしは大きな声で歌い上げた。