はじめまして



夏の日射しを浴びて、畑のレタスは青々しく輝き、その生命力を見せている。

ゆるりとした風が土と樹木の香りを優しく運んでくる。



「思い出してくれた?岳志君」


彼女の声に、俺の口元は自然とほころんだ。


「あぁ、約束だったよな。めぐみさん」


彼女の顔に笑顔の花が咲いた。


「今の私の名前は『裕美』っていうのよ」

イタズラっぽく笑う瞳が光る。



「そうか、裕美さんなんだ。なんか俺だけ歳とっちまったな」

俺の言葉に彼女はおかしそうに笑った。

「私ね、あの後すぐに転生できたの。今年ハタチになるのよ。憧れてた大人にもなれたの。そうそう、その間ずっと岳志君のこと探していたんだから………ホント………やっと会えた………」

片目を瞑りながら彼女は嬉しそうに言った。

俺はそんな彼女が愛しくなってたまらなかった。

そして、彼女を真っ直ぐ見つめて言った。


「おかえりなさい、裕美さん。そして、はじめまして」


俺の言葉に彼女は眩しそうに瞳を閉じた。
そして、呟いた。


「ただいま、岳志君。そして、はじめまして」









~了~

< 11 / 11 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

明日の君と

総文字数/82,592

恋愛(純愛)106ページ

表紙を見る
Mr.ハードボイルド

総文字数/56,600

恋愛(ラブコメ)93ページ

表紙を見る
ひとみ

総文字数/65,068

恋愛(ラブコメ)110ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop