はじめまして
夏の日射しを浴びて、畑のレタスは青々しく輝き、その生命力を見せている。
ゆるりとした風が土と樹木の香りを優しく運んでくる。
「思い出してくれた?岳志君」
彼女の声に、俺の口元は自然とほころんだ。
「あぁ、約束だったよな。めぐみさん」
彼女の顔に笑顔の花が咲いた。
「今の私の名前は『裕美』っていうのよ」
イタズラっぽく笑う瞳が光る。
「そうか、裕美さんなんだ。なんか俺だけ歳とっちまったな」
俺の言葉に彼女はおかしそうに笑った。
「私ね、あの後すぐに転生できたの。今年ハタチになるのよ。憧れてた大人にもなれたの。そうそう、その間ずっと岳志君のこと探していたんだから………ホント………やっと会えた………」
片目を瞑りながら彼女は嬉しそうに言った。
俺はそんな彼女が愛しくなってたまらなかった。
そして、彼女を真っ直ぐ見つめて言った。
「おかえりなさい、裕美さん。そして、はじめまして」
俺の言葉に彼女は眩しそうに瞳を閉じた。
そして、呟いた。
「ただいま、岳志君。そして、はじめまして」
~了~