はじめまして
1投目に川の真ん中辺りで、ルアーにアタリがあった。
俺は思いっきりロッドを立てアワセをおこなった。
ロッドの手元にずしりとした重みが伝わった。
よしっ!
俺は心の中でガッツポーズをする。
ロッドを立てたまま俺は急いでリールを巻いた。
だが、途中でものすごい違和感を感じた。
ロッドには重みは伝わるものの、いわゆる魚の引き、生命感というものが全く伝わってこなかった。
ゴミかなんか引っ掛けたかな………
俺は糸の先を注視した。
水中から黒い影が浮かび上がってきた。
俺はその影の正体を見て愕然とした。
それは、ナスだった。
しかも、4本の割り箸の刺さったナスだった。
これって………
お盆の時に川に流すアレだよなぁ………
いわゆるご先祖様を乗せる馬だか牛だか、ソレだよ…………
俺は丁寧にナスから針を外してもう一度それを川に流そうとした。
すると、水面に何か浮かんでいることに気付いた。
なんだ、アレ?
人の手みたいに見えるけど………
それは川に流されながらこちらに近づいてきた。
やっぱり人の手だった。
溺れているように水面でバタバタしている。
次の瞬間、俺は何も考えず川に飛び込んでその手を掴んだ。
そしてグイと引き寄せ、浅瀬に引っ張り上げた。
そこには、俺と同い年くらいの女の子がいた。