はじめまして
「やっぱり見えるんだ!」
彼女は驚いたように声をあげた。
その言葉にどう答えていいのかわからず、俺は眉根をしかめた。
「あっ、助けてくれてありがとう」
やっと彼女の口からお礼の言葉が出た。
別にお礼を言われたくて助けたわけではないが、少し嬉しくなった。
「えぇとね、私、内藤めぐみ。幽霊なの」
なんかものすごい違和感ある言葉が耳に届いた。
なにかの聞き違いかと思い、もう一度彼女に聞き返した。
「だから、私の名前は内藤めぐみ。幽霊なの。君の名前は?」
やっぱり、聞き違いではなかった。
なんか、アホらしくなったんで何も言わずに家に帰ろうと思った。
ロッドを片付け、無言で帰り支度をしている俺に彼女はまた声をかけた。
「なんでシカトするのよ。名前訊いてるでしょ?」
だが、自称幽霊女に名乗る名前などない。
俺は淡々と支度を終えてその場を立ち去ろうとした。
そして、1歩目の足を出した時、彼女は俺の腕を掴んだ。
その手は氷のように冷たく、俺は悲鳴を上げそうになった。