はじめまして
「ちょっと待ってよ」
彼女は俺の手を掴んで離さなかった。
「なんなんだよ!あんたさ、人が助けてやったってのに、わけわかんないこと言いやがって」
俺は彼女を振り解こうとしたが、その冷たい手は離れなかった。
「ちゃんと、話を聞いてよ!」
いきなり逆ギレされた。
「人の話を聞きもしないで、いきなり帰ろうとして。取り憑くわよ!」
もう、わけわからねぇ。
意味不明の戯れ言に付き合いたくもない。
「じゃあよぅ、あんた幽霊って言い張るんならその証拠見せろって」
売り言葉に買い言葉じゃないが、俺は彼女にそう言い放った。
俺の言葉に彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「わかったわ。証拠見せればいいのね。なら私の足元見てよ」
彼女の言葉に倣って、俺は視線を彼女の足元に落とした。
そこには、しっかりと地を踏む2本の足があった。
「足なら、2本しっかりとあるじゃねぇか」
そう言った俺の言葉に、彼女は顔をしかめた。
整った顔立ちが急に憎らしいほど歪む。
「幽霊に足が無いなんてのは嘘よ。そんなことも知らないの?足じゃなくて影よ。影」
俺はその棘のある言いぐさに腹を立てながらも、もう一度、彼女の足元に視線を向けた。