水曜日の片想い


これから毎週水曜日の放課後はわたしと橘くんと………


そして、百合ちゃんとの3人の時間になるのかな。


嫌だな。

わがままだけど、この時間だけは譲りたくない。

この空間だけはわたしが努力してつかんだものだと胸を張って言える。


そう簡単に取られたくないんだ。



「瀬戸」



いつからこんな欲張りになっちゃったんだろう。

橘くんに会えるだけでよかったはずなのに……もっと欲しいって、貪欲になってしまった。



「ーーーおい、瀬戸日菜子」


「ひゃっ、ひゃい!?!?」



突然耳元で声が響き、驚いて顔を上げるとすぐ隣りに橘くんの姿があった。


動揺して変な悲鳴をあげてしまったわたしとは反対に、橘くんは「うるさいな」と冷静な顔でわたしを見下ろしている。

な、なに……?


さっきまでいつものようにカウンターに座って黙々と本を読んでいたはずなのに。


あっ。

さりげなく目元を触ると、指先が少し濡れた。

こんなに近くにいたら泣いていたのがバレてしまう。


零れそうだった涙を急いで拭い、平気な顔を装った。


< 122 / 291 >

この作品をシェア

pagetop