水曜日の片想い
力強く地面を蹴り上げて、大好きな橘くんの側へ行こう。
「橘くん…………!!」
喉の奥を精一杯開き、『届いて』と願いながら叫んだ。
もしもわたしが本当に橘くんの特別な人になれてるなら、きっと気持ちが通じてくれるはず。
大好きな本と同じくらい
いや、それ以上の人になりたいんだ。
「瀬戸………?っと、百合?」
本に落としていた橘くんの視線がふと上がったとき、わたしと目が合った。
初めてわたしに気づいてくれた……。
百合ちゃんが呼んだときは返事がなかったのに。
こんなに上手くいくと低脳なわたしはすぐに勘違いしてしまうからやめてほしい。
橘くんのバカ。
大好き。
「旭陽っ!一緒にご飯食べましょ」
「わ、わたしも!!」
百合ちゃんとほぼ同時に橘くんの元へ着き、並んで声を掛ける。
「なんだよそんな興奮して。好きにすれば?」
言葉は冷静だったけどかなり驚いたらしい。
目をギョッと弾かせて物珍しげにわたしたちを見ていた。
「それじゃあ、好きにさせてもらうわね」
橘くんを間にして、両側にわたしと百合ちゃんが座った。
一瞬一瞬が勝負だ。