水曜日の片想い


「手伝ってやるから早く立て」


「えぇっ!?そんな悪いよ!!」


しかも橘くんは、わたしの半分以上の量を積み重ねている。

素直に受け入れた方が可愛げあると言われた直後だが、さすがにこれは罪悪感しかない。


「おっ、重いからわたしが………!」


「重いから俺が持つんだ。さっさと行くぞ」


えっ……。

わたしの言葉なんかは完全に無視。

聞き耳持たずとはこのことだ。


背を向けてスタスタと廊下の先にある音楽室まで歩いて行ってしまう橘くん。

急いで追いかけるも、教材を渡してくる気はないらしい。


「音楽室でいいんだよな?」


「うん……!」


落ち着いてからようやく気付いたけど、さっきの橘くんの言葉はかっこよすぎるのでは?


「重いから俺が持つんだ」って………もう、好き。


橘くんみたいなかっこいい人にあんなこと言われたら、みんな恋に落ちちゃうよ。

好きになるなっていうほうが難しい。


ホント、優しいなぁ。


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