水曜日の片想い
せっかく橘くんに会えたんだ、このチャンスを逃していいわけがない。
音楽室に2人きり。
ここなら防音だし、他の誰にも聞こえない。
橘くんにしか伝わらない。
このままさよならするくらいなら、ずっと言えなかった“あの事”を聞いておくべきだと思った 。
この機会を逃したらきっとわたしはこれから先も変わらず立ち止まったままだ。
真実ならちゃんと受け止めるから、
1歩踏み出せ。
「橘くん…………」
「なんだ?」
声が震えていたって構わない。
わたしの言葉が橘くんに届いてさえいればいい。
震える唇を強引に動かして、
「百合ちゃんと結婚の約束してるって、本当?」
風に飛ばされそうなほど軽い声を発した。
「………は?」
その後ワンテンポ遅れた橘くんの微妙な返事が返ってくる。