水曜日の片想い


つまりそれは遠回しに普通ってことだよね?


「はっ、花火大会一緒にどうかな、なんて……」


首を傾げながら「えへへ」と微妙な笑みを浮かべた。

好きな人をデートに誘うってこんなに恥ずかしいものだと初めて知った。


「いつ?」


「えっと、夏休み入ってすぐの週………」


痛いくらいの心臓の音。

このまま飛び出してしまってもおかしくない。

あまりにも大きすぎるから橘くんの返事をかき消してしまいそうだ。


こんなこと聞くのはやっぱり無謀かな?


軽い誘いなんだよって保険を掛けたくなる人の気持ちがよくわかった。

断られる前提で聞いたんだよって、傷つくのを少しでも避けたいから。



「なーんて、行かな…………」



「わかった、行くよ」



「へ?」


「行ってやってもいいってこと。それとも冗談だった?」



聞き間違いじゃない、よね?

今確かに聞いた。


「じょ、冗談じゃないです!!ぜひお願いします!!!」


正直「めんどくさい」と断られると思っていたのに予想外すぎてなんて言えばいいかわからず、変な返事をしてしまった。


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