水曜日の片想い
「鞄って教室?付き合ってやるから早く来なよ」
そ、それってつまり………。
「一緒に帰ってくれるの?」
橘くんからわたしを誘ってくれてるってこと?
「…………言わないとわかんない?」
恥ずかしそうに控えめな瞳でわたしを見ていた。
素っ気ない言葉に詰まったわずかな甘さが、一瞬にしてわたしの心を奪い去っていく。
花火大会に一緒に行く約束ができただけでも十分すぎるくらい嬉しかったのに、次は一緒に帰ってくれるなんて………。
こんな奇跡の連続はずるい。
幸せすぎてバチがありそう。
「さっさと来い。置いていくぞ」
「あっ、待ってよ〜!」
ポーッと橘くんに見とれている場合ではない。
振り向きもせずに音楽室を出て行ってしまう背中を急いで追いかけた。