水曜日の片想い


「いつまでそこに立っているつもりだよ。行くぞ」


「えっ!」


橘くんがかっこよすぎて、ぽーっと見惚れてしまっていたらしい。


全く動こうとしないわたしを見て不思議そうに首を傾げていた。


「行きますっ!」


カランッと地面を擦る草履の音がよく響く。


人混みが多くなるにつれて、周にはカップルばかり。

さすが花火大会………カップルのためのイベントみたいなものだしね。


横を通り過ぎたあの2人組も、目の前を歩く人も、全員が恋人同士に見えてくる。

男女が一緒に歩いていたら、もう付き合っているようにしか見えないよ。


他の人から見たら、わたしと橘くんもカップルに見えたりするのかな?


お似合いの言葉をもらうにはほど遠いけど、今日はわたしなりに精一杯オシャレをしてきたんだ。


白地に青色の花柄の浴衣。

女の子らしいより綺麗系を目指してみたつもり。


大人っぽい橘くんには、大人可愛い女子が似合うと思ったから。


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