水曜日の片想い


「花火まで時間あるし、何か食べるか?」


わたしが喜びに浸っている間に気が付いたら赤くなっていた顔は熱を引き、いつもの橘くんに戻っていた。


さすがクール男子。

元に戻るのが早い。


「えっと……それじゃあ、わたあめ食べたいな!」


「ははっ、言うと思った」


「えぇ、なんで?」


「瀬戸は甘党だからな」


橘くん、わたしが甘いもの好きなの覚えていてれたんだ。

大変な事件というか、変な出来事だったし、逆に忘れられないかも?


そういえば、今日はあの日と同じくらい橘くんと話せていると思ったら、本を持って来ていないからだ。


橘くんの相棒とも呼べる本が今日はどちらの手にも見当たらない。


そうだよね、花火を見に来てるんだもん。さすがに本は読まないよね?


いつも片手に持っていたからちょっとした違和感を感じてしまった。

慣れって怖いなぁ……。


でも、これは橘くんとたくさん話せる大チャンス!

手離さない本に嫉妬していたくらいだから、今日だけはわたしが橘くんを独り占めできるんだ。


ふふっ、最高な1日の始まりって感じかな。


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