水曜日の片想い


奥へと進んでいくうちに、ようやく屋台が見えてきた。

入り口にいたときよりも、ずっと多くの人が歩いている。


こんなに人がいたらすぐに逸れちゃいそう。

そうならないためにも、隣を歩く橘くんとの距離を少し詰めた。


わっ、あと数センチで手が届いちゃう。


こんなに近かったら、わざとぶつかっても気づかれないんじゃない?

手汗がないか確認しておいたほうがいいかな……。




「なぁ、わたあめ屋が見えてき………って、何してんだ……」


「へっ!?」


ちょうど手汗チェックをしていたのを、タイミングよく橘くんに見られてしまった。

至近距離で手のひらをジッと見ている女の子って………普通に考えたら変だよね?


現に橘くんだって若干引いてる。


「えっと……手にゴミがついてて〜」


すぐにパッと背中に手を隠して言い訳を吐いても、もう手遅れだった。

せっかく橘くんとの距離を縮めるためのデートだったのに、これじゃあ離れていくばっかりだよ。


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